「退職金増税」という言葉を、ニュースやSNSで見かけたことはないでしょうか。私も少し前にそれを目にして、まだ定年まで距離のある身ですが、気になって調べてみました。こういう話を放っておけない性分です。妻には「気が早い」と笑われました。
調べてみて、二つのことに驚きました。ひとつは、退職金というのが、数ある収入の中でも「最も優遇された所得のひとつ」だということ。もうひとつは、その優遇ゆえに、いま増税の議論の的になっていることでした。しかも、受け取り方やiDeCoとの兼ね合いを知らないと、同じ退職金でも手取りが数百万円単位で変わることがある。
まだ受け取っていない私が書くので、体験談ではありません。あくまで調べた範囲での理解ですし、税制は変わることもあります。それでも、40代のいま仕組みだけでも知っておくと、いざというとき慌てずに済むと感じたので、書いておきます。
退職金は「最も優遇された所得」のひとつ
まず驚いたのが、退職金の税金の軽さでした。
私が調べた範囲では、退職金には「退職所得控除」という大きな控除があります。勤続年数が長いほど、退職金から差し引ける金額が増えていく仕組みです。しかも、そこから差し引いた残りの、さらに半分だけが課税の対象になる。つまり二重に優遇されているわけです。

数字で見ると、その大きさがはっきりします。退職所得控除は、私が調べた範囲では、勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超えた分は1年あたり70万円で計算するそうです。仮に、私がこのまま定年まで勤め上げて勤続38年になると、控除額は「800万円+70万円×18年」で、2060万円という計算になります。もし退職金が2000万円なら、控除のほうが上回るので、税金はかからないことになる。2000万円を受け取って、ゼロです。同じ2000万円を毎月の給与でもらえば、所得税と住民税で数百万円は引かれることを思うと、その差に正直、驚きました。
では、退職金が控除を超えたらどうなるか。たとえば退職金が3000万円なら、控除の2060万円を引いた残りの約940万円、そのまた半分の約470万円だけが、課税の対象になります。3000万円もらって、税金がかかるのは470万円ぶんだけ。長年ひとつの会社で働いた人への、国からのご褒美のような制度だな、というのが調べたときの正直な感想でした。会社員にとって、退職金は「人生でいちばん優遇される受け取り方」と言ってもいいのかもしれません。
だからこそ、増税の議論の的になっている
ここで、さっきの「増税」の話につながります。
これだけ優遇されている所得なので、裏を返せば、税金を取りたい側から見れば「ここはまだ取れる余地がある」と映る。実際、退職金の課税をめぐっては、格差を是正するといった名目で見直しの議論が何度も出てきました。私がニュースやSNSで目にしたのも、その流れのようです。
さらに調べて意外だったのは、「実はもう一部は増税されている」という話でした。勤続年数が短いうちに受け取る退職金については、あの「半分だけ課税」の優遇が制限される仕組みが、すでに入っているそうです。優遇は永遠ではないし、少しずつ形を変えている。だからこそ、自分が受け取る頃にどうなっているかは、そのときの最新情報で確認する必要があると感じました。ここは公開している私の理解も含めて、鵜呑みにせず、ご自身で最新の情報を確かめてください。
受け取り方とiDeCoで、手取りが数百万円変わる
もうひとつ、これは知っておいたほうがいいと感じたのが、受け取り方と、iDeCoとの関係です。
退職金は、一時金としてまとめて受け取る方法と、年金のように分割で受け取る方法を、選べる場合があります。どちらが有利かは、金額や勤続年数、退職後の働き方や他の収入で変わるので、「一時金が絶対に得」とは言い切れません。ただ、選べるという前提を知らないまま、会社に言われるまま受け取る人も多いと聞きます。

そして、いちばん盲点だと感じたのがiDeCoでした。iDeCoも一時金で受け取ると、退職金と同じ「退職所得控除」を使えます。ところが、退職金とiDeCoを受け取る年が近いと、この控除が重複して使えず、思ったより税金がかかることがあるそうです。受け取る順番やタイミングにルールがあって、そこを外すと、人によっては100万円から200万円ほど、余計に税金を払うことにもなりかねないそうです。
私はiDeCoをやっていないので直接は関係ないのですが、やっている人にとっては、退職の何年も前から意識しておくべき論点だと感じました。なぜ私がiDeCoをやっていないのかは、別の記事に書いています。
40代のいま、私ができると思ったこと
では、まだ定年まで距離のある40代の私に、いま何ができるのか。調べたうえで、私が「これはやっておこう」と思ったのは、次の3つでした。
ひとつは、仕組みだけでも知っておくこと。退職所得控除があること、受け取り方を選べること、iDeCoと重なると損しうること。この3点を頭の隅に置いておくだけで、いざというとき落ち着いて調べられます。
ふたつめは、政府の動きを、ときどきチェックすること。退職金の税金は「優遇されているから狙われやすい」場所です。数年に一度、見直しの議論が出ていないか気にしておく。それだけで、増税されたときに慌てずに済みます。
みっつめは、受け取りが近づいたら、自分の場合を必ず一度シミュレーションすること。金額と勤続年数を当てはめれば、一時金と分割でどれくらい変わるかは、おおよそ見えてきます。
いまなら、その試算のとっかかりに、ChatGPTやClaudeといったAIを使うのが便利だと感じています。「退職金が◯◯万円で勤続◯◯年だと、税金はだいたいいくらになる?」と聞けば、考え方の筋道と、おおよその目安をすぐに返してくれる。私自身、以前に配当金の税金をAIに相談して、払いすぎていた分を取り戻せたことがありました。ああいう複雑な話ほど、AIは最初のとっかかりに向いていると思います。
もちろん、AIの答えはあくまで目安です。細かい条件までは拾いきれないこともあるので、最後は公式の情報や、必要なら専門家に確認する。それでも、「何から調べればいいのか分からない」という最初のハードルを下げてくれるのは、大きいと感じています。だから、こういう計算が要ると今のうちに知っておくだけでも、十分に意味があると思いました。
まとめ|優遇されているものほど、静かに狙われる
退職金は、まだ受け取っていない私が言うのもなんですが、調べてみて「優遇されているものほど、静かに狙われるんだな」というのが、いちばんの学びでした。
最も優遇された所得だからこそ、増税の議論に上がりやすい。受け取り方やiDeCoしだいで、手取りは数百万円変わりうる。だから、40代のいちばんの備えは、大金を用意することより、まず「仕組みと動きを知っておくこと」なのだと思います。妻には気が早いと笑われましたが、こういう地味な下調べが、あとで効いてくる気がしています。会社員が使える節税の全体像は、別の記事にまとめました。

