「毎月、分配金が入ってくる投資信託」と聞くと、なんだか良さそうに見えませんか。持っているだけで毎月お金が振り込まれる。年金の足しになりそうだし、増えている実感もある。正直に言うと、投資を始めたばかりの私だったら、たぶん飛びついていたと思います。
でも、インデックス投資を8年続けてきたいまの私は、毎月分配型の投資信託を、もう買いません。それどころか、これから資産を増やしたい人には、はっきり勧めないほうがいいとさえ思っています。なぜそこまで言うのか。その理由を、自分の失敗も含めて正直に書きます。
じつは私、20代のころに一度、毎月分配型を買っています。当時、勧められるままに買ったインド株のファンド。買うときに3%台の手数料を取られ、そのうえ持っている間も、毎年1%台の信託報酬が引かれ続ける商品でした。しかも毎月分配型。いま思えば手数料の塊のような代物ですが、恥ずかしながら当時の私は、その手数料の重さも、「毎月分配」が何を意味するのかも、まるで分かっていませんでした。毎月いくらか振り込まれるのを見て、なんとなく「うまくいっている」と思い込んでいたのです。今日は、その失敗から学んだことを正直に書いてみます。
そもそも「毎月分配型」とは何か(私の理解で)
毎月分配型の投資信託は、その名のとおり、毎月「分配金」を出してくれる商品です。株や債券で運用しながら、その一部を毎月、投資家に配る。だから、持っているだけで毎月お金が入ってくるように見えます。
問題は、この「毎月入ってくるお金」の中身です。分配金には、運用でちゃんと増えた利益から出す分と、自分が最初に預けたお金(元本)を、そのまま返しているだけの分が混じっていることがあります。後者は、専門的には「特別分配金」とか「元本払戻金」と呼ばれます。増えて配られているように見えて、実は自分の財布から自分の財布に移しているだけ、ということが起こり得るのです。俗に「タコが自分の足を食べる」ことにたとえられます。
私が毎月分配型を買わない、3つの理由
1. 資産を増やす時期に、複利を捨てることになる
投資でお金が増える大きな理由のひとつが、複利です。増えた分を再び投資に回すことで、雪だるまのように膨らんでいく。私が8年続けてこられたのも、この複利を信じているからです。
ところが毎月分配型は、増えた分(かもしれないお金)を毎月外に出してしまう。手元には現金が入りますが、その分、再投資に回るお金は減ります。まだ資産を育てている40代の私にとって、これは「エンジンの燃料を毎月抜いている」ように感じます。複利をどれだけ味方にできるかは、手数料の差と同じくらい効いてくる話で、それは「信託報酬の差、本当に計算したら500万円違った話」で痛感しました。
2. 「増えた気がするだけ」の分配になっていることがある
さっき書いた「元本払戻金」の話です。毎月お金が入ってくると、それだけで「うまくいっている」と感じてしまいます。でも、その中身が自分の元本の払い戻しなら、資産はちっとも増えていない。むしろ、運用がうまくいっていない時期でも分配を続けるために、元本を削っていることさえあります。
まさに、私が20代で買ったインドのファンドがこれでした。毎月いくらか振り込まれるのを見て「増えている」と思い込んでいたのですが、冷静に中身を見れば、毎年1%台の信託報酬が引かれ続けたうえに、分配金のいくらかは自分の元本が戻ってきていただけ。トータルでは、思っていたほど増えていませんでした。「毎月お金が入る」という実感に、まんまと目を曇らされていたわけです。
この「実感」と「実態」がズレる怖さは、その後もう一度味わっています。貯蓄型保険と抱き合わせで、よく分からないまま手数料の高い投資信託を持っていた時期があって、その顛末は「10年以上払った貯蓄型保険を解約した話」に書きました。私はどうも、「毎月」や「なんとなく良さそう」という言葉に弱いようです。
3. 手数料が高めの商品が多い
これは全部がそうだとは言えませんが、毎月分配型は、運用や分配の手間がかかるぶん、信託報酬(保有中ずっと差し引かれる手数料)が高めに設定されている商品が目立ちます。毎月お金が入ってくる満足感の裏で、手数料が静かに差し引かれ続ける。長く持つほど、この差は効いてきます。
「増やす箱」であるNISAが、毎月分配型を入れていない
この「増やす時期には向かない」という性質は、制度の設計にもはっきり出ています。長期の資産形成を後押しするための新しいNISAでは、毎月分配型の投資信託は、基本的に対象から外されています(2026年時点)。国が「増やすための箱には入れない」と、あらかじめ線を引いているわけです。
それを象徴する出来事が、2026年6月にありました。米国の人気の高配当株ETF「HDV」が、それまでの年4回の分配から毎月分配へ変わると発表されたのです。すると、この変更によってHDVはNISAの成長投資枠の対象から外れ、楽天証券などでは新しく買い付けができなくなりました(すでにNISAで持っている分は、そのまま非課税で持ち続けられます)。長く人気だった商品でも、毎月分配に変わったとたんに「増やす箱」から出される。私はこのニュースを見て、制度がなぜここまではっきり線を引くのか、逆によく分かった気がしました。毎月分配というのは、それくらい「増やす」とは相性が悪い、ということなのだと思います。
私の結論:これから増やしたいなら、買ってはいけない
ここまでの話をまとめると、私の結論はひとつです。これから資産を増やしていきたい人にとって、毎月分配型は、買ってはいけない商品だと私は考えています。歯切れよく言い切るのは、金融の話では珍しいかもしれません。それでもこう書くのは、手数料の高さ、複利を捨てること、そして「増えた気がするだけ」になりやすいという3つが、増やす目的とことごとく逆を向いているからです。国がNISAの「増やす箱」からわざわざ外しているのも、突き詰めれば同じ理由だと思います。
「毎月お金が入ってくる手軽さが好きだ」という人もいるでしょう。その気持ちは、20代でまさにそれに惹かれた私にはよく分かります。でも、その手軽さの代金として払い続ける手数料と、削られていく元本を思うと、私はやはり勧められません。少なくとも、これから増やそうとしている人が、最初に手を出す商品ではない。私はそう思っています。
20代のあの日の自分に、いま伝えたいこと
だからこの記事は、誰かを批判したいわけではなくて、あのインドのファンドを疑いもせず買った、20代の自分に向けて書いているようなところがあります。もし過去に戻れるなら、こう言いたい。「毎月お金が入ってくる商品を見かけたら、一度だけ立ち止まって、この毎月のお金は増えた利益なのか、それとも自分の元本が戻ってきているだけなのかを確かめてくれ」と。私が失敗から学んだのは、突き詰めればその一点です。
いまの私は、増やす時期の道具として、分配金を出さずに再投資してくれるインデックスファンドのほうを持ち続けています。派手さはないけれど、あのころのように「増えている気がするだけ」で終わることは、もうありません。どのインデックスにするかで迷った話は「S&P500とオルカン、どちらにするか迷った話」に書きました。

