お金を貯めるのは、この数年でわりとできるようになりました。固定費を削って、積立を自動化して、家計簿も月10分で回るようになった。仕組みは、だいたい整ったと思っています。
それなのに、最近ふと「何のために貯めてるんだっけ」と、手が止まる瞬間がありました。貯め方は分かったのに、使い方の地図がない。それで一度、「タイムバケット」というものを書き出してみたんです。今日はその話です。
タイムバケットとは、人生を「年代のバケツ」で考えること
タイムバケットは、ざっくり言うと「死ぬまでにやりたいこと」を、年代ごとのバケツに振り分けていく考え方です。40代のバケツ、50代のバケツ、60代以降のバケツ。それぞれに、その年代でやっておきたいことを入れていきます。
ポイントは、お金の話を先にしないことです。いくら必要か、いくら貯まっているか、ではなく、「いつ、何をしたいか」を先に書く。お金は、そのあとで「じゃあ、それにいくら要るか」を考える順番になります。私はこれまで、完全に逆でした。お金を貯めることが先にあって、使い道はいつも後回しだったんです。
近い未来はすぐ埋まって、遠い未来が空いた
金曜の夜、晩酌を一回休んで、ノートの裏紙に三つのバケツを書きました。本当はスプレッドシートにしたかったんですが、それをやると一生フォーマットづくりで終わる気がして、ぐっとこらえて手書きにしました。
40代のバケツには、体力が要ることが多く入りました。歩く旅、少しきつい登山、運転して遠くまで行くドライブ。それと、親と一緒に過ごす時間。50代の欄には、学び直しと、夫婦でのんびりする時間。ここまでは、わりとすらすら書けました。
ところが、60代以降のバケツが、ほとんど埋まりませんでした。これが、書いていていちばん引っかかったところです。近い未来のやりたいことはすぐ出てくるのに、遠い未来になると、急に何も浮かばない。お金のことはあれだけ先まで計算しているのに、楽しみのほうは、10年先の絵すら描けていなかったんです。その空白も含めて、これが今の自分の現在地なんだろうな、と思いました。
書き終えて、ひとつはっきりしたことがありました。40代のバケツに入れたことの多くは、お金より先に「体力」と「親の時間」という期限がついている、という点でした。お金がいくらあっても、その期限は延ばせません。
「お金は手段」が、初めて腹に落ちた
「お金は人生の道具にすぎない」。この言葉は、頭ではずっと分かっているつもりでした。でも、正直に言うと、ただの標語みたいになっていました。実際の私は、残高が増えると安心して、減ると不安になる。お金そのものを目的にして生きていたと思います。
タイムバケットを書いて初めて、その言葉が少し腹に落ちました。お金は、あとからでも作れます。働けば増やせるし、運用で増える可能性もある。でも、40代の体力も、親と出かけられる時間も、あとからは取り戻せません。取り戻せないものにこそ、お金という取り戻せるものを使うべきなんじゃないか。そう思えたのは、書き出してみたからでした。
「とにかく貯める」から「これのために」へ
この一枚を書いてから、貯める理由が少し変わりました。前は「とにかく貯める。多いほど安心」でした。今は「この時期にこれをやるために、ここは貯める。そして、ここは使う」と、貯めると使うがセットになりました。
面白いことに、使うことへの罪悪感が減りました。これまで、旅行や体験にお金を出すたびに、どこかで「貯金が減る」と感じていました。でも、それがタイムバケットの40代の欄に書いたことなら、減るのではなく「予定どおり使った」になる。同じ出費でも、気持ちがまったく違いました。
書き出して、ひとつだけ、すぐに動いたこともあります。40代の欄の「親との旅行」を、ずっと『そのうち』のままにしていました。予定が合わないとか、行き先がどうとか、理由をつけては何年も先送りにしてきた。たぶん本当は、ただ腰が重かっただけです。
でも今回は、店も予算も後回しにして、日程だけ先に押さえました。几帳面な私にしては、順番がめちゃくちゃです。それでも、日程さえ決まれば、店もお金もどうにかなる。逆に、全部きれいに決まるのを待っていたら、たぶん一生「そのうち」のままでした。先に電卓を叩いていたら、また「もう少し貯まってから」と言っていたはずです。
もちろん、無計画に使う話ではありません。土台になる積立や生活防衛資金は、これまでどおり淡々と続けます。そのうえで、「貯めるだけ」になっていた部分に、使う予定を書き込んだ、という感覚です。
家計簿の前に、一度書いてみてよかった
節約も投資も、「どう貯めるか」の話が中心になりがちです。私もずっとそうでした。でも、貯め方をいくら磨いても、「何のために」が抜けていると、どこかで手が止まる。今回それがよく分かりました。
もし、貯める仕組みはできたのに、なんとなく満たされない感じがあるなら、一度だけ、紙に年代のバケツを書いてみるのをおすすめします。きれいに作る必要はありません。私も、走り書きの一枚です。それでも、自分のお金が「何のためのお金か」が、少しだけ見えてきます。私の場合は、それだけで、毎月の積立を続ける気持ちが、前より前向きになりました。


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