最近、SNSで流れてくる投資の広告が、やけに巧妙になりました。有名な投資家や経営者の写真を勝手に使って、「誰でも月◯%」「私が教えます」とやってくるタイプです。私は今のところ引っかかっていませんが、正直に言うと、昔の自分なら危なかったと思います。
20代で手数料の高いファンドを、30代で外貨建ての保険を、よく分からないまま買っていた人間です。「専門家っぽい人が勧める」「今だけ」に、とにかく弱かった。だから、今の投資詐欺の手口を、どうしても他人事だと思えません。今日は、私が「これは危ない」と判断している見分け方を、3つに絞って書きます。
今の投資詐欺は、「怪しさ」を消してくる
昔のいかにも怪しい話と、今のものは少し違います。今は、本物らしく見せるのが本当に上手い。実在する有名人の名前と写真を使い、きれいな実績画面を見せ、最初は丁寧で親切です。そして、どこかのタイミングで、LINEのグループや個別のやりとりに誘導してきます。
LINEのグループに入ると、ほかの参加者が次々と「今月も増えました」「先生のおかげです」と報告していて、自分だけ乗り遅れている気にさせられます。あれの多くは、信じ込ませるために用意された役回りです。本物の投資の世界に、毎月そろって勝ち続ける人ばかりが集まる場所は、まずありません。
なぜ、ここまで自然になったのか。ひとつには、AIの影響があると言われています。以前は、海外発の詐欺は日本語がどこか不自然で、「てにをは」のおかしさや妙な言い回しが、見抜く手がかりになっていました。日本語の難しさが、ある種の防波堤になっていたんです。ところが、AIで自然な日本語がいくらでも作れるようになって、その防波堤が破られました。日本サイバー犯罪対策センターも、生成AIによって詐欺の文面が巧妙化していると注意を呼びかけています。これまでいちばん頼りにしていた「日本語が変だから怪しい」という見分け方が、もう効かなくなってきたんです。
「怪しい話には気をつけよう」とよく言いますが、今のものは、その「怪しさ」を消す方向に進化しています。だから、雰囲気で見抜こうとすると、たぶん間に合いません。私は、雰囲気ではなく、決まったサインで判断するようにしています。
私が「これは危ない」と判断している3つのサイン
ひとつ目は、「元本保証」「必ず儲かる」「月◯%」と、数字で安心させてくること。まともな投資に、元本保証はありません。利回りを言い切った時点で、もうその先は聞かなくていいと思っています。本物の運用ほど、「上がることも下がることもあります」としか言えないものです。断定してくる自信は、商品の良さではなく、こちらを安心させるための道具です。
ふたつ目は、「今だけ」「あなただけ」と、急がせて、特別扱いしてくること。急がせるのは、こちらに考える時間と、人に相談する時間を与えないためです。本当に良い話なら、明日まで待ってくれます。一晩寝かせると消える話は、だいたい消えて正解です。「あなただけ特別に」も同じで、特別感で判断を鈍らせる、古くからある手口です。
みっつ目は、やりとりが、SNSのDMやLINEグループの中だけで完結していること。証券会社や銀行のような、ちゃんとした金融機関が、SNSの個別メッセージやLINEグループで、あなた一人に投資を勧誘してくることはありません。公式のアプリや窓口の外に連れ出された時点で、私はもう疑います。連絡手段が「閉じた場所」になっているかどうかは、けっこう分かりやすい線引きです。
3つを覚える前に効く、たったひとつの習慣
とはいえ、サインを3つ覚えるより、もっと根本的に効く習慣がひとつあります。それは、「自分の言葉で説明できない商品は買わない」、という一点です。これは詐欺に限らず、私が投資全般で守っているルールでもあります。
詐欺の多くは、仕組みをわざと曖昧にして、「とにかく儲かる」という結論だけを刷り込んできます。逆に言えば、その商品が「どういう仕組みで、なぜ増えるのか」を、自分の言葉で人に説明できないなら、相手がどれだけプロを装っていても、手を出さないほうがいい。
昔の私は、まさにこれができていませんでした。銀行の窓口で勧められたファンドを、仕組みを分からないまま買って、損をした。あれは詐欺ではありませんでしたが、根っこは同じです。「説明できないものを、雰囲気で買う」というクセこそが、いちばん危ない。詐欺は、そのクセを正確に突いてきます。
いちばん怖いのは、自分より親世代
正直に言うと、自分のことより怖いのは、親世代がスマホで狙われることです。先日も、帰省したときに親のスマホの設定を少し整えてきました(このあたりは親のスマホの詐欺対策に書きました)。
そのとき親に伝えたのは、難しい見分け方ではなく、たったひとつです。「お金の儲かる話が来たら、決める前に、一回だけ私に言って」。詐欺は、本人を一人で抱え込ませて、急がせることで成立します。だから、誰かに一言言える状態にしておくだけで、かなりの確率で止まります。これは、自分自身にも同じことが言えると思っています。
もしSNSで「必ず儲かる」を見かけたら、中身を吟味する前に、まず「元本保証や利回りを断定していないか」「急がせていないか」「閉じた場所に誘導していないか」の3つだけ確認する。ひとつでも当てはまったら、その先は読まない。私はそうしています。うまい話を見抜く力より、うまい話に乗らない習慣のほうが、たぶん長く効きます。



コメント