iDeCoは、掛金がまるごと所得控除になる制度です。この一点だけ見れば、これほど分かりやすく得な仕組みも、なかなかありません。
それでも、私はやっていません。今日は、こんなに得な面があるのに私がやらない理由と、逆に「こういう人はやったほうがいい」と思うタイプを、正直に書きます。やる・やらないを決めかねている人の、判断材料になればと思います。
まず、iDeCoの良さを正直に書いておく
私はやっていませんが、制度そのものはよくできていると思います。節税が、大きく3段階で効きます。
ひとつは、掛金が全額所得控除になること。これで毎年の所得税と住民税が安くなります。たとえば会社員が月2万円(年24万円)を拠出するなら、その24万円がまるごと所得控除になります。仮に所得税と住民税を合わせた負担が2割くらいの人なら、年に約4.8万円、税金が軽くなる計算です。税率は人によって違うのであくまで一例ですが、相場が上がろうが下がろうが関係なく、払った時点で確実に効くのは大きい。投資の値動きが苦手な人にも分かりやすいメリットです。ふたつ目は、運用しているあいだの利益が非課税になること。みっつ目は、受け取るときにも一定の控除があること。
特に「毎年、確実に税金が戻ってくる」という部分は、NISAにはない強みです。ここだけ取れば、私も素直にうらやましい制度だと思っています。
こういう人は、やったほうがいいと思う
そのうえで、向き不向きはかなりはっきり分かれる制度だと感じています。私が「これは合いそうだ」と思うのは、こんな人です。
まず、自営業やフリーランスの人。会社員と違って老後の土台が国民年金だけになりがちで、しかもiDeCoに出せる掛金の上限が大きい。節税の効きも置き場所としての価値も、いちばん大きいタイプだと思います。
次に、勤め先に企業年金がなくて、NISAはもう満額まで使い切っている会社員。非課税で置ける場所をさらに増やしたい、という人には自然な次の一手になります。それから、所得が高めで所得控除の効きが大きい人や、「放っておくと老後資金を使ってしまう」と自覚していて、いっそ60歳まで強制的にロックしたい人。こういう人には、引き出せない縛りがむしろ長所として働きます。
逆に言うと、NISAの枠をまだ埋めきれていない人や、数年以内にまとまったお金が要りそうな人は、急いで始めなくてもいい、というのが私の感覚です。
それでも私がやっていない理由
私の場合は、ひとつはNISAの枠を先に埋めきりたかったこと。もうひとつは、60歳まで引き出せないという縛りが、自分の性格には少し重かったことです。以前、その理由はiDeCoとNISA、どちらを先にやるべきか(私がiDeCoをやらない3つの理由)という記事に詳しく書きました。
節税は確かに魅力的なのですが、私はいつも「これは絶対に使わないお金か」を先に分けて考える人間で、そこで一度立ち止まると、どうしても手が止まってしまいました。これは制度の良し悪しではなく、相性の問題だと思っています。
もしやるなら、先に確認したい3つ
もし私がこれから始めるなら、先にここだけは確かめます。ひとつ目は、口座の管理手数料。加入しているあいだずっとかかるので、金融機関によって差が出ます。手数料が複利でじわじわ効くのは、投資信託選びとまったく同じでした。
ふたつ目は、受け取るときの税金。入口の節税ばかり語られますが、出口はむしろ複雑です。先ほどリンクした記事で、私はこの受け取り時のハードルを「卒業試験」と呼びました。そして実は、その卒業試験は2026年からさらに難しくなりました。iDeCoの一時金と会社の退職金を、それぞれ「退職所得控除」という大きな優遇でフルに受け取るために必要な間隔が、これまでの5年から10年に延びたのです。いわゆる「10年ルール」です。受け取る順番やタイミングを間違えると、せっかくの控除が削られて、入口で節税したぶんを出口で取り返される、ということも起こりえます。ここは制度が細かく、退職金の額や受け取り時期で正解が変わるので、自分のケースは国税庁の情報か、税理士などの専門家に確認するのがいちばん安全です。
みっつ目は、やはり60歳まで引き出せないこと。これは確認というより、覚悟の問題です。
「節税」より先に、自分に聞くこと
iDeCoは、どうしても「節税」という言葉が先に立つ制度です。でも私が大事だと思うのは、節税額の前に「このお金を60歳まで触らない、と本当に言い切れるか」のほうでした。
そこにはっきりイエスと言えて、しかも先ほどの「やったほうがいい人」に当てはまるなら、これほど頼もしい仕組みもないと思います。私はそこで少し迷ったので、いまはやっていません。制度の損得表を眺める前に、その一点だけ自分に聞いてみると、やる・やらないの答えは案外すんなり出るはずです。私の場合は、そうでした。


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