6月の終わりから7月にかけて、わが家には配当金が少しずつ入ってきます。金額はたいしたことないんですが、この時期は口座を開くのが、ちょっとだけ楽しみになります。
その配当と、最近の株高が重なって、ある朝スマホで口座を見たら、評価額が今までで一番高い数字になっていました。オルカンも高配当株も、両方が調子いい。正直に白状すると、にやけました。
ただ、この「機嫌のいい朝」が、私にはいちばん危ない。今日はその話です。
浮かれた私は、個別株を買いかけた
その朝、通勤電車でぼんやりスマホを見ていたら、SNSで「半導体の株を持っていて、この一年で倍になった」という投稿が流れてきました。ふだんなら「へえ、すごいなあ」で通りすぎる話です。
でもその日は違いました。自分の評価額が過去最高だったこともあって、私はすっかり気が大きくなっていた。「オルカンと高配当株だけじゃなくて、自分も少し、話題の株を持ってみてもいいんじゃないか」。そんな考えが、ふわっと湧いてきたんです。
我ながら現金なものです。ふだんは「淡々と積み立てるのが結局いちばん」なんて偉そうに書いておきながら、評価額のいい朝には、こうもあっさり心が動く。
これ、買い物のときにいつもやってることだ
電車を降りるころには、証券口座のアプリを開きかけていました。「今からでも、少しは買えるな」と。
指が止まったのは、ふと、自分のいつものクセを思い出したからです。私は欲しいものを見つけても、その場ではまず買いません。一度手を止めて、家に帰って、一晩置く。翌日また欲しければ買うし、たいていは忘れている。自分でも「また悩んでるよ」と苦笑いしながら、この「一晩置く」だけで、要らない買い物をずいぶん減らしてきました。
株も同じじゃないか、と気づきました。今この瞬間に「欲しい」と思っているだけで、明日の自分が同じ気持ちとは限らない。だったら、いつものクセどおり、一回棚に戻せばいい。イヤホン一つ買うのに一晩考える人間が、株を電車の中で勢いで買うのは、筋が通らない話です。
昔、これと同じことで痛い目に遭っている
もうひとつ、ブレーキになった記憶があります。私は昔、まったく同じことをやって、しっかり失敗しているんです。
20代のころ、まわりが「これから伸びる」と言うのを真に受けて、インド株のファンドを買いました。手数料が3%以上もかかる商品だと、当時の私はよく分かっていませんでした。今の自分なら、まず手を出さない商品です。30代では、勧められるまま外貨建ての保険と変額保険を契約して、解約するときに控除で数十万円が消えました。
どちらにも共通しているのは、「まわりが儲かっている話に乗って、中身をよく見ずに買った」ことです。今回のSNSの株も、構図はそっくりそのまま同じでした。人は喉元を過ぎると、痛かったことを本当にきれいに忘れる。忘れかけていた私に、昔の失敗のほうから「おい、また同じことをやる気か」と声をかけてくれた、そんな感覚でした。
スプレッドシートを開いたら、朝の高揚が引いた
家に帰ってから、念のため、いつも家計をつけているスプレッドシートを開きました。私の積立は、インデックスがだいたい7割、高配当株が3割。この配分に落ち着くまで、8年かかっています。
ここに「話題だから」という理由で個別株を足すのは、8年かけて整えたものを、たった一日の気分で崩すことになる。数字を並べて眺めているうちに、朝のふわふわした高揚は、すーっと引いていきました。妻に「なにか買うの」と聞かれて「いや、やめとく」と答えたら、「ちゃんと戻ってくるお金なんでしょうね」と、いつもの口癖が返ってきます。うまい返しも思いつかず、まったくそのとおりだ、と心のなかでうなずいておきました。
結局、何もしなかった
その夜、証券アプリは結局開きませんでした。積立の設定はそのまま、配分もそのまま。翌朝には、個別株のことなんて、頭からきれいに消えていました。一晩置いたら消えてしまう程度の「欲しい」だった、というだけの話です。
暴落した日に売らずに済んだ話は、前に書きました。あれは、恐怖に負けなかった話でした。今回はその真逆で、欲に負けなかった話です。下げでも上げでも、私がやるのは同じで、いつもの自分にそっと戻すだけでした。
私にとって危ないのは、下がる日より上がる日だった
8年やってみて、下がって青くなる日より、上がって浮かれる日のほうが、自分にとってはよっぽど危ない。今回、それがはっきり分かりました。
下がった日は「怖いから動かない」で済みます。でも上がった日は、「もっと増やせるかも」という前向きな顔をして近づいてきて、いつもと違うことをやらせようとしてくる。前向きな理由がつくぶん、こっちのほうがずっとタチが悪い。
私の手を止めてくれたのは、りっぱな投資理論ではありませんでした。買い物でいつもやっている「一晩置く」クセと、昔きっちり失敗した記憶と、8年かけて自分で書いたスプレッドシート。どれも、生活のなかで身についた地味なものばかりです。まあ、私にはそれで十分なんだと思います。
最近の株高との基本的な付き合い方はこちらに、私の実際の積立配分はこちらに、昔の保険と投資の失敗はこちらに書きました。投資をふくめた40代のお金の全体像は40代の資産形成は何から?にまとめています。
※本記事は2026年7月時点の私個人の経験に基づくものです。特定の銘柄への投資を勧めるものではありません。将来の値動きやリターンを保証するものではなく、投資の最終判断はご自身でお願いします。


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