「どうせ年金なんて、私たちがもらう頃には破綻してるよ」。40代にもなると、こういう会話を耳にすることが増えました。私自身、老後まではあと20年ほど。正直、不安がないと言えば嘘になります。
でも先日、年金にまつわるあるニュースを見て、少し調べてみたら、思っていたのとはずいぶん違う景色が見えてきました。結論から言うと、「年金は破綻する」というのは、どうやら言い過ぎのようです。ただし、「だから何もしなくて大丈夫」という話でもありませんでした。今日は、私が調べて腑に落ちたことを、そのまま書きます。
「年金は破綻する」は、本当なのか
きっかけは、私たちの年金を運用している組織が、大きな黒字を出した、というニュースでした。
調べた範囲では、その組織は「GPIF」といって、私たちが納めた年金保険料の一部(積立金)を運用している、いわば日本の年金運用の元締めのような存在でした。規模は300兆円近く、世界でも最大級。あまりに巨大なため、市場では「クジラ」とも呼ばれているそうです。そのGPIFの運用成績が、直近の1年でおよそ41兆円の黒字。しかも6年連続の黒字だと知って、正直、拍子抜けしました。さらにさかのぼると、2001年からの通算では、累計でおよそ197兆円ものプラス。この四半世紀には、リーマンショックもコロナ暴落もあったのに、です。年率にならすと、平均で4%台のリターンだといいます。(数字はいずれもGPIF「2025年度の運用状況」より。2026年7月時点)
年金積立金(GPIF)の累積収益額の推移
2001年度〜2025年度。途中で何度も減っているが、売らずに持ち続けた結果、通算では約197兆円のプラス。
1 2008年度・リーマンショック(-9.3兆円)/
2 2015年度・チャイナショック(-5.3兆円)/
3 2019年度・コロナショック(-8.3兆円)
「破綻する、破綻する」と言われ続けてきた年金の裏側で、そのお金は、着実に増えていた。少なくとも「明日にも破綻して一円ももらえない」という類の話ではないのだな、というのが、調べてみての正直な感想でした。
年金のお金は、私と同じことをしていた
もうひとつ驚いたのが、その運用の中身でした。
なにか特別な、プロだけが知る秘密の方法かと思っていたのですが、そうではありませんでした。国内の株、外国の株、国内の債券、外国の債券。世界中の株と債券を、ほぼ4等分して持っているだけ。要するに「世界にまるごと分散して、長く持つ」という、とてもシンプルな形でした。
これは、私が8年続けてきたインデックス投資と、発想がほとんど同じです。世界最大級のプロ集団が、奇をてらわず、私のような一般人がやっているのと同じ「分散して、長く持つ」をやっている。そのことが、なんだか妙に励みになりました。
じつは私も、暴落で売らずに持ち続けた
いちばん親近感がわいたのは、その組織が去年の暴落をどう乗り切ったか、という話でした。
去年の春、大きな暴落がありました。私の口座も含み益がぐっと減りました。ただ、あのときはもう、そんなに動揺しませんでした。そして、その巨大な運用組織も、暴落のあいだ、何もせず淡々と持ち続けていたそうです。そして、その1年が、結果的に過去でも指折りの黒字になった。もし暴落にビビって売っていたら、あの黒字はなかった、というわけです。
ただ、最初からこうだったわけではありません。コロナ暴落のときの私は、まるで違いました。怖くて何度も売りたくなりながら、なんとか持ちこたえた。その話は「インデックス投資を8年続けた正直な感想と、高配当株を始めた理由」に書きましたが、まさか自分のやったことが、世界最大級のプロと同じだったとは思いませんでした。「暴落で売らない」。この一点だけは、私も胸を張れる気がして、少しだけ誇らしくなりました。
ただし、安心しきってはいけない理由
ここまで読むと「なんだ、年金は安泰じゃないか」と思うかもしれません。でも、調べていて、そう単純ではないことも分かりました。
公的年金は、私が積み立てたお金が自分に返ってくる仕組みではなくて、いわば「仕送り方式」です。いま働いている現役世代が納めた保険料が、そのまま、いまの受給者に仕送りされている。さきほどの運用のお金は、その財源のごく一部を支えているにすぎず、年金全体で見ると1割ほどなのだそうです。
運用のお金は、年金全体の「1割」を支えている
だから運用が好調でも、それだけで将来の年金が大きく増えるわけではない。
左の9割=その年の保険料収入+国庫負担(年金の水準を決めているのはこちら)/
右の1割=積立金。41兆円の黒字は、この1割の部分の話。
つまり、運用がどれだけ好調でも、それで私の将来の年金がぐっと増えるわけではない。むしろ、これから少子高齢化で「仕送りする人」が減っていくと、もらえる年金の水準は、じわじわと調整されていく可能性が高い。運用の黒字は、その目減りをやわらげてはくれるけれど、なくしてくれるわけではない。ここは、冷静に受け止めておくべきだと感じました。
だから私は、公的年金に「自分年金」を足している
破綻はしない。でも、もらえる額は、いまより減るかもしれない。この二つを合わせて考えると、私がやるべきことは、はっきりしていました。
公的年金を土台として当てにしつつ、足りないかもしれない分は、自分で少しずつ準備しておく。私の場合は、NISAを使って、こつこつと「自分年金」を積んでいます。やっていることは、あの巨大な運用組織と同じ、「広く分散して、長く持って、暴落でも売らない」だけ。難しいことは、何もしていません。
不安だからと年金の話から目をそらすより、正しく知って、自分でも少し備えておく。そのほうが、ずっと心が落ち着くと気づきました。
まとめ|破綻を恐れるより、正しく知って少し備える
「年金は破綻する」という言葉は、調べてみると、だいぶ大げさでした。運用は着実に黒字を積んでいて、制度そのものがすぐに崩れる、という話ではありません。ただし、これから受け取る年金の水準は、少しずつ下がっていくかもしれない。だから、安心しきるのも違う。
私がたどり着いた答えは、「怖がりすぎず、当てにしすぎず」でした。年金は土台として大事にしつつ、その上に、自分でも少しだけ「自分年金」を積んでおく。そのやり方は、世界最大のクジラがやっていることと同じで、拍子抜けするほどシンプルです。私がその第一歩に何を選んだかは、「SBI証券でNISAを始めた話」に書いています。

