40代になってから、「そろそろ家を買わないの?」と聞かれることが増えました。同年代の友人が次々とマイホームを建てるのを見ると、正直、少し焦る気持ちがないわけでもありません。でも私は、いまのところ賃貸で暮らしています。
最初は「いつかは持ち家」と、なんとなく思っていました。ところが、いざ自分でよく調べてみると、賃貸と持ち家は「どっちが得」と簡単には言えないこと、そして私の暮らし方には賃貸のほうが合っていることが、だんだん見えてきました。今日は、私が家を買わずに賃貸を選んでいる理由を、正直に書きます。
先に言っておくと、これは持ち家を否定する話ではありません。持ち家には持ち家の良さがあって、それが向く人もたくさんいます。あくまで「私の場合は賃貸だった」という一例として読んでください。
「賃貸と持ち家、どっちが得」に、私が出した答え
この論争は、たぶん永遠に決着しません。私も何時間もかけて比べてみましたが、たどり着いたのは「条件しだいで、どちらにも転ぶ」という、少し拍子抜けする結論でした。
家賃と住宅ローン、固定資産税や修繕費、住む年数や物件の値動き。前提を少し変えるだけで、有利なほうはあっさり入れ替わります。つまり、純粋な損得だけで白黒つけようとすると、たいてい僅差の勝負になる。それなら私は、「わずかな得か損か」より、「どちらが自分の暮らし方に合うか」で決めたほうがいい、と考えました。
理由1:身軽さ——住み替えの自由がある
私が賃貸でいちばん気に入っているのは、身軽さです。
仕事の事情で引っ越すことになっても、家族の形が変わっても、賃貸なら比較的すぐに住み替えられます。私は数年前に一度引っ越していますが、あのとき持ち家だったら、あんなに気軽には動けなかったはずです。隣人と合わない、日当たりが思ったより悪い、そんなときにも「次の更新で引っ越そう」と思えるのは、地味に大きな安心でした。
理由2:維持費と、大きな借金を背負わない安心
もうひとつは、お金の面です。
持ち家には、家賃とは別の維持費がかかります。私が調べた範囲では、固定資産税、修繕費、マンションなら管理費と修繕積立金。こうした費用は、住んでいるかぎりずっと発生します。賃貸なら、設備が壊れても基本は大家さんの負担ですが、持ち家では自分で直すことになる。この「持ち続けるコスト」は、意外と見落とされがちだと感じました。
家を検討すると、「毎月の家賃より、ローンの返済額のほうが安いですよ」とすすめられることがあります。でも、これはかなり注意が必要な比べ方だと、調べていて感じました。持ち家には、ローンの返済額のほかに、買うときの諸費用(登記や手数料などで、一般に物件価格の数%から1割ほど)、毎年の固定資産税、修繕費、さらに売るときの費用まで、いろいろかかります。「ローンの返済額 対 家賃」だけを並べると、こうした持ち家の隠れたコストが、すっぽり抜け落ちてしまう。本当にフェアに比べるなら、これらを全部ふくめた「総コスト」で見ないといけないのだと気づきました。
そして私にとって大きかったのが、数千万円の住宅ローンという長期の借金を、背負わずに済むことでした。もちろんローンをうまく使う人もいますが、私のような心配性には、「この先何十年もこの返済が続く」という状態が、どうにも落ち着きません。この身軽さのほうが、私には合っていました。
理由3:持ち家は、じつは大きな「不動産投資」でもある
これがいちばん腑に落ちた理由なのですが、調べていくうちに、持ち家というのは、住まいであると同時に、数千万円をつぎ込む「不動産投資」でもあるのだと気づきました。
「家賃はもったいない、買えば資産になる」とよく言われます。でも、投資だと考えると、話は変わります。私が調べた範囲では、新築の家は買った瞬間に「新築」という価値が外れ、資産価値が1〜3割ほど落ちることが珍しくないそうです。販売価格には広告費や人件費も乗っているからです。さらに日本は、世界の中でも住宅価格が上がりにくい国だと言われています。ある指標では、2000年を100としたとき、アメリカやイギリスが140〜180に上がる一方で、日本はむしろ下がっている、という数字もありました。
つまり、持ち家で本当に得をするには、値下がりしにくい家、いわゆる「リセールバリュー」の高い物件を、見極めて買う必要があります。ところが、そういう物件を選び抜くのは、プロでも簡単ではないと言われます。たくさんある物件の中で、値上がりするのはほんの一握り、という話も目にしました。
正直に言って、私にはその目利きの自信がありません。だとしたら、無理に不動産投資に踏み込むより、賃貸で無難にいくほうが、私には合っている。これが、私が賃貸に落ち着いた、いちばん腑に落ちた理由でした。
それでも、持ち家の良さは、ちゃんと認めている
ここまで賃貸の話をしてきましたが、持ち家を悪く言いたいわけではありません。
持ち家には、賃貸にない良さがあります。住宅ローンには団体信用生命保険がついていて、もしものときに家族へ家を残せる。壁に穴を開けようが、好きにリフォームできる自由もある。ローンを払い終えれば、老後の住居費がぐっと軽くなるのも心強い。そして何より、「自分の家を持つ」という満足は、お金の損得だけでは測れないものです。長年の夢だという人にとっては、その価値はとても大きいはずです。
だから、これは「賃貸が正解」という話ではありません。持ち家が向いている人は、確かにいます。私はたまたま、身軽さを重く見る性分だった、というだけのことです。
私が賃貸で意識していること
賃貸を選んだ以上、意識していることもあります。
ひとつは、身の丈に合った家賃にすること。賃貸は身軽なぶん、つい良い部屋に手を伸ばしがちですが、そこは抑えています。もうひとつは、持ち家を買わないぶん浮いたお金を、そのまま投資に回すこと。住宅ローンを組まない代わりに、その体力を資産づくりに向けている、という感覚です。
まとめ|損得で白黒つけず、暮らし方で選べばいい
賃貸と持ち家は、どちらが得かで無理に白黒つけなくてもいい、というのが、私がたどり着いた考えです。純粋なお金の勝負なら、たいてい僅差。それなら、身軽さがほしいのか、自分の城がほしいのか、自分の暮らし方で選べばいい。
ただ、ひとつの目安として腑に落ちたのは、「持ち家は不動産投資でもある」という見方でした。値下がりしにくい家を見極めて買える人なら、持ち家は資産にもなる。でも、その目利きに自信がないなら、賃貸で無難にいくのも立派な選択だと思います。私はたまたま後者でした。
大事なのは、「みんなが買うから」でも「家賃がもったいないから」でもなく、自分にとってどうかで決めること。家にかけるお金を整えたら、家計全体もぐっと見通しがよくなります。その考え方は、別の記事にもまとめました。

