離れて暮らす父が、詐欺の電話に出てしまった——。その話を後から聞いたとき、背中がひやりとしました。幸い、大きな被害にはなりませんでした。でも、「次は、私がそばにいない」と思うと、落ち着いていられなかった。
すぐにできる対策は、しました。海外からかかってくる電話を、入り口でまるごと止める手続きです(具体的なやり方は、以前 実家の詐欺対策でやったことの記事 にまとめました)。今日書きたいのは、その先の話です。私は本当は、実家の固定電話そのものを、解約してほしかった。でも、それは通りませんでした。
「その電話、出ちゃダメ」が言えない距離
離れて暮らしていて、いちばんもどかしいのは、その場にいられないことです。あやしい電話が鳴った瞬間に、横で「出ないで」と言えれば、どんなにいいか。でも、私は名古屋、実家は離れたところにあって、顔を出せるのは年に3、4回ほど。電話のことは、たいてい後から聞いて知るしかありません。
「気をつけてね」と電話口で伝えることは、できます。でも、それで防げるなら苦労はしません。手口は年々巧妙になっていくのに、こちらは「注意してね」と口で言うだけ。これでは、いつか必ず破られます。そう感じて、私は「気をつける」より「仕組みで止める」ほうに切り替えました。海外からの着信を止めたのも、その一つです。
「固定電話、もう解約しない?」と言ってみた
正直に言うと、いちばん確実なのは、固定電話そのものをやめることだと思っていました。今どき、家の固定電話に鳴るのは、勧誘か、あやしい電話くらい。用のある人は、たいてい父のスマホにかけてきます。固定電話のある家ほど「高齢者がいる」と見られて狙われやすい、という話も聞きました。
だから、帰省したときに、思いきって言ってみたんです。「この固定電話、もう解約しちゃわない?」と。
返ってきたのは、はっきりした「いや、それは困る」でした。理屈では、私のほうが正しいはずでした。それでも、父は首を縦に振らなかった。
番号を手放せない、という気持ち
最初は、正直、どうしてだろうと思いました。ほとんど使っていないのに。でも、話を聞くうちに、だんだん分かってきました。
その番号は、もう40年近く使ってきたものです。実家の電話台の横には、いまも分厚い電話帳と、手書きの連絡網が置いてある。年賀状にも、昔の知り合いの手帳にも、その番号が書いてある。めったに鳴らなくても、「あの人から、いつかかかってくるかもしれない」。父にとって固定電話は、便利な道具というより、世の中とつながっている細い糸のようなものなのだと思います。私が「合理的じゃない」と切り捨てようとしたものは、父にとっては、そう簡単に手放せるものではありませんでした。
これは、お金の話とも同じだなと思いました。私はつい、「数字で見て、得か損か」で決めたがる。でも、人が何かを手放せないときには、たいてい数字に乗らない理由があります。そこを無視して「正しいほう」を押しつけても、うまくいかない。長く投資や家計をやってきて、いちばん効くのは、正論より「本人が納得できるか」だと、何度も思い知らされてきました。
解約しないまま、守る方法に切り替えた
そこで、考え方を変えました。解約してもらえないなら、固定電話は残したまま、あやしい電話のほうを止めればいい。
幸い、いまは固定電話を残したままでも、詐欺の入り口になりやすい海外からの電話を、無料で止められる仕組みがあります。番号はそのまま、年賀状の連絡先も生きたまま、危ない電話だけが減る。これなら、父も「困る」とは言いませんでした。手続きそのものは、私が電話一本でやってしまえる。手放せないものは残して、危ないところだけをふさぐ。落としどころというのは、たいてい、こういう地味な形をしています。
「解約してくれないなら、もう知らない」と突き放してしまえば、たぶん父は、二度とこの手の話を聞いてくれなくなる。守りたかったはずなのに、かえって距離ができてしまう。そうならずに済んだのは、私が折れて、やり方のほうを変えたからでした。
まとめ:正しさより、続けられるかたち
振り返ると、私は最初、いちばん「正しい」答え(解約)を、そのまま父に通そうとしていました。でも、本人が納得しないやり方は、結局続きません。相手が親であっても——いや、親だからこそ、正論で押し切るのは、いちばん下手なやり方でした。
離れて暮らす親を、完全に守りきることはできません。それでも、本人が嫌がらない範囲で、危ない入り口をひとつずつ閉じておく。固定電話は残ったけれど、海外からの電話は止まった。今はそれで、よしとしています。実家の電話まわりで具体的に何をしたかは 実家の詐欺対策の記事 に、投資の世界で出会った詐欺の見分け方は 投資詐欺の見分け方の記事 にまとめています。


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